†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「――明美さん…」
新たに年を迎え、3学期が始まるまで
あと数日となった。
一人買い物に出かけていた恵は
家の前にいた明美を見て息を呑む。
「家の前なんかで待っててごめんなさい。
でも、どうしても恵ちゃんと話がしたくて」
冷静を保っているように見える口調も、
怒りを表しているようにしか恵は聞こえていなかった。
二人は近くの公園に向う。
冷たい風が全身に伝わってきた。
「イブの日、優介と一緒にいるとこ見たんだ」
「!!」
ビクッと体が揺れた恵。
ゆっくりと顔を上げ明美を見る。
不敵な笑みを浮かべていた。
「謝る気、ありませんよ」
「別にそんな事どうでもいいの。
…貴方は以前私の恋は頑張れば叶うって言ってたでしょ?
それは間違ってる。
恵ちゃんだって、叶うわよ」
「励ましのつもりですか?
…私の事何も知らないくせに、そんな言葉
簡単に言わないでください」
強い眼差し。明美一点に集中する。
今度は明美がビクッとなった。