†君、男~Memory.. limit of grief~





「――明美さん…」


新たに年を迎え、3学期が始まるまで
あと数日となった。


一人買い物に出かけていた恵は
家の前にいた明美を見て息を呑む。


「家の前なんかで待っててごめんなさい。
 でも、どうしても恵ちゃんと話がしたくて」


冷静を保っているように見える口調も、
怒りを表しているようにしか恵は聞こえていなかった。
二人は近くの公園に向う。


冷たい風が全身に伝わってきた。


「イブの日、優介と一緒にいるとこ見たんだ」


「!!」


ビクッと体が揺れた恵。
ゆっくりと顔を上げ明美を見る。
不敵な笑みを浮かべていた。


「謝る気、ありませんよ」


「別にそんな事どうでもいいの。
 …貴方は以前私の恋は頑張れば叶うって言ってたでしょ?
 それは間違ってる。
 恵ちゃんだって、叶うわよ」


「励ましのつもりですか?
 …私の事何も知らないくせに、そんな言葉
 簡単に言わないでください」


強い眼差し。明美一点に集中する。
今度は明美がビクッとなった。



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