†君、男~Memory.. limit of grief~
レインだけど、レインじゃない。
冷たい空気で言葉を発していたレインなのに、
今はとても温かく感じる。
何があったの―――…?
「あっ…優兄」
先に中庭のベンチに座っていた優介。
恵が優介の前に立った。
「もうすぐで試験だろ?頑張れよ」
「うん」
優介は楽な態勢を取り目を瞑った。
それでも会話は続く。
「そう言えばレイン…雰囲気変わったな」
「え?」
目を丸くして固まる恵。
何で?と言う言葉すら出てこなかった。
考え込むように口に手を当て優介から目を逸らす。
「そうか?」それが不意に出た答えだった。
「なんとなくだけどな。
前より明るくなったと思う」
「…」
明るくなった?
どうして?私は何もしていない。
いつもと変わらない。
“砂時計の怒りを少しでも
和らげるための強がりなんだ。”
「 」
一気に見開いた目―――
恵はその場に座り込んだ。
優介は目を開け、駆け寄る。
「どうした?」
そう声をかけるが返事がない。
何か言っているが聞こえない。
優介は耳を近づける。
「私…」と言う言葉が聞こえた。
恵は両手で口を押さえ、呼吸が乱れてくる。
「ハ…ッう」
「おっおい大丈夫か!?」
私…私…!
私に与えられた3年と言う期間は
優兄を忘れるための期間だと思ってきた。
そして私はそれに逆らい、
好きでい続けた。
時に諦めようと心がけたが、
それはすぐに壊された。
そして砂時計は私を責める…。
時間は私にチャンスなど与えてはいなかった…!
全部、全部…全部砂時計の策略だったんだ!