†君、男~Memory.. limit of grief~
「去年の冬、お母さんに会ったんです。
私を捨てたと思ってた親に…。
けど、違うって…言ってくれて…!」
涙で声がかすれる。
ツカサはそっと恵の肩に手を乗せ、
温かい笑みに続いて言葉が続いた。
「貴方のお母さんは、めぐちゃんの事
誰よりも気にかけてくれてるわ。
だってめぐちゃん、凄い嬉しそうだもの」
「えっ?」
恵は耳を疑う。
「本当はめぐちゃんがお母さんと会ってこと、
気づいてたの…。
いつもめぐちゃんは悩んでて…心配だったわ。
私達が何も知らないと思ってたら大間違いよ?」
いたずらっぽく笑みを浮かべた。
恵は涙を拭い口元を歪める。
しかしすぐに表情は曇った。
「…私…一緒に暮らせないかって言われて、
でも…!全然考えれなくて…」
いつしかツカサの目は涙で溢れていた。
「私達はこれからもずっと家族…それだけは忘れないで。
でも、めぐちゃんが親と過ごしていなかった期間の
空白を埋めることはすごい大事だわ。
親との時間、大切にしてほしいの」
「…ッ」
「心配しないで!めぐちゃんは
ちゃんと蒼井家の娘だからね。
…話してくれてありがとう」
「うん…うん…!」
ツカサは恵を抱きしめる。
廊下では実也がその会話を聞いていた。
―寂しさと言う感情を押し殺しながら…。