†君、男~Memory.. limit of grief~
「優兄っ…!」
校舎の中を探し回っていた恵は
屋上に続く階段で優介を見つけ、声をかける。
「2月…19日空いてる?
燐にプラネタリウムのチケットもらって、
その日が19日なんだ」
19日―卒業式1週間前だ。
3年の恵達はもう学校に行く回数は指で数えれる程度。
1週間前ともなればせいぜい2回ぐらいだろう。
そんな中、恵はチケットを優介に見せる。
「いいよ。空けとく」
「本当?」
疑り深い目で優介を見つめる恵。
「本当」と鼻で笑いながら答えた。
「プラネタリウムか…楽しみにしとく」
「じゃあ、1時に駅で」
「分かった。忘れんなよ」
「当たり前だ。…それと」
一旦言うのを止め、深呼吸をする。
そしてゆっくり話し始めた。
「私…宮原家に戻る事になった」
「え?」
「戻るといっても完全じゃない…
名前も蒼井のままでいる。
ただ、一緒に入れなかった時間を取り戻したいんだ」
「そっか…凄い決断だったな」
コクンと頷き、優介はそっと恵の頭を撫でた。