†君、男~Memory.. limit of grief~


「彼女、いたんだ」


「違う」


「何が?二人で行ってたら
 誰だってそう思うでしょ?」


「今は彼女じゃない。
 いるわけないだろ」



  “今は”、か…



「昔は彼女だったんだ。
 優兄そういう話したことなから
 分かんないよ…」


「レインには関係ない話だろ。
 帰るぞ」


川から上がり、
階段に向かおうとする優介。
恵は動かないままだ。


「…私は今でも、
 目を覚まさない少女を持っている。
 貴方がいなくなったその日からも
 ずっと描き続けてきた」


「…!」


「私が優兄を裏切った
 決定的な理由…。
 私は今でも忘れてない」



「ごめん…俺はもう
 戻れないから」




どうして…



どうしていつも貴方は
そうやって自分を隠すの?


苦しむのは貴方自身じゃない…



「優兄!!」


私は、何も出来ないまま…


そんなの、あの頃と何も変わってない。



「生徒会の話、
 引き受けさしてもらいます」


「      」



悲しむだけが、


 人間じゃない――…



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