†君、男~Memory.. limit of grief~


恵はゆっくり足を動かす。
燐の呼び止める声は耳に入ってこない。
ただその場所に向う事だけを考えていた。


「優兄…」


「    レイン!」


やめて、そんな「ばれた」って顔しないで。
私、何も気にしてないから…。


「ごめん…」恵は言う。


お願いだからそんな目で見ないで。
私、大丈夫だから…だから…


涙、流れてこないでよ―――…っ


「ありがとう…っ」


「レイン!」


恵はその場から走り去って行く。
優介も後を追った。
残された燐は明美に怒りをぶつける。


「どうして先生といんのよ!!
 レインと約束してたのに!」


「…私だって分かってた。
 だから、さよならを言いたかったの…」


「え―――…?」



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