†君、男~Memory.. limit of grief~

「レイン!」


卒業式の練習も終え、3年生はそそくさと帰っていく。
恵は燐と教室を出ようとしていた。それを優介が呼び止める。


「何ですか?」


「えっ、あ…えっと」


呼び止めたのはいいものの、
何を言うかを考えていなかった。
クスっと恵は笑みを見せる。


「先生度忘れですか?
 また思い出したら言ってください。
 さようなら」


「「        」」


優介はもちろんのこと、隣にいた燐も
その言葉に耳を疑った。
わざとなのか?それとも…


「あ、あぁ…」


わけが分からず出た言葉。
恵は帰っていく。燐も後を追った。



「レイン、日曜日ね… 
 先生があの人といたのは理由があったからなの。
 あの人―――」


「燐」


突然名前を呼ばれビクッとなる燐。
怒った?と顔をのぞくがまったくもってそんな様子ではない。
むしろ微笑みながら言い始めた。


「燐、私はもう大丈夫だ。
 心配する必要なんてない。
 …次に来るのは三送会の日だったな」


「―――…」


燐は立ち止まり、恵の後ろ姿を
自然とあふれ出る涙と共に見つめた。




レイン、本当に終わっちゃったの?



もう…何もかも思い出に変わってしまうの?




卒業式まで後4日。


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