†君、男~Memory.. limit of grief~
「うっ…うぅ…」
燐は朱鷺の手を握り締めながら涙を流し、
何度も鼻をすすった。
『…私だって分かってた。
だから、さよならを言いたかったの…』
『高校の時、優介と付き合えたことだけが凄い嬉しくて…
でも浮かれてるのは私だけだった。
優介の心を癒すのも解き放つのも恵ちゃんだって
気づいて、別れを告げたの。
無理やり好きだという感情を押し殺してね…』
『けど久しぶりに再会してね、
また当時の気持ちがよみがえったんだ…。
優介に会いたい気持ちが大きくなった。
でも、恵ちゃんを見て思ったの。
あの子の想いは本物だって…。
そんな中に私は入ることは絶対に駄目。
だから、今日本当の別れを言うつもりだった。
ありがとう…って言うつもりだったのに――』
“私…あんなにも純粋な心を持った子、
初めて見たわ―――…”
「あんま泣くと、卒業式で泣けなくなるぞ」
「大丈夫。レインの代わりに私が泣くんだもん。
これぐらい、平気」
明後日は卒業。私が出来る事は
彼女の代わりに泣き、彼女に笑顔を上げること。
だからレイン…いっぱい笑って――