†君、男~Memory.. limit of grief~


「引越しする前、か…」



貴方はどんな思いで
私の前から消えたの?



「あの時いた、人は
 高3の時の彼女…?」


何かが頭を過ぎったとき、
恵の携帯が鳴り出した。


「はい?」


《あっレイン?朱音だけど、
 来週の日曜日空いてるー?》


「何、急に…この間の遊ぶ件?」


呆れた恵は靴を履き外に出る。


《うん、やっぱり遊びたいもん。
 カラオケとかどうかな?》


朱音は期待しながら返事を待つが、
受話器の向こうからため息が聞こえてくる。


「何で男子の前で
 歌わなきゃいけない…」
 

《まぁまぁ。もうほとんで決まっちゃってるしさー》


またため息が聞こえた。


「分かったから。
 ごめん、また後で電話する」


プチッと電話を切り、
空を見上げる。


自分達の街じゃ見ることなど出来ない
星の数だった。




優兄――…



私はあの時から、
男子と関わりなんて一切なかった。


私も、貴方も
目を覚まさないあの少女の絵と
重なってるんだよ…?



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