†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
「レイン注目の的だー」
「うるさい!」
教室に戻る途中、
廊下歩く二人。
恵は不機嫌そのものだ。
「蒼井さん?」
恵を呼び止めたのは
先ほど名前を呼ばれていた
2年の副会長都宮慎だった。
「(そういえばこの人、
名前呼ばれたとき騒がれてたな…)
私に何か用ですか?」
「1年で会長ってすごいね」
またか…というように恵は
遠い目になる。
慎は笑った。
「まぁそんな暗い顔しないでよ。
せっかく生徒会に入ったんだし。
聞いた話だと蒼井さん“レイン”って
呼ばれてるんだってね。
じゃレイン、安井さんまた放課後に」
爽やかに通り過ぎていく慎。
不快感を持つ恵の横で
燐の目は輝いていた。
「かっこいいよねー都宮先輩!
人気あるの分かるわー!
いいなーレイン。あだ名で呼ばれて」
「別にどうだっていい」
“今年の生徒会長、
一年って聞いた!?”
“生徒会の役員って
誰が何になるか分かんないみたいだし”
“1年で会長ってすごいね”
私が生徒会長?
たとえ気づいてるって
本音言えるほど強くなくても、
心ではもう全て分かってる。
優兄…
そこまでして私を、
壊したいの――――…?