†君、男~Memory.. limit of grief~

響く悲しみの歌声




時が過ぎるのは本当に
早いものだった。


2学期の始業式が終わり、
気づけば10月半ば。
残り2週間となった文化祭。
ちゃくちゃくと準備は行われていた。


そんな中、校外学習が行われた。




「今から3時まで自由行動とします。
 くれぐれも気をつけるように」


スピーカから流れる声は
少しうるさいもので、生徒達は
早く動き出したい気分でいっぱいだった。


「レイン、結菜!あっち見にいこー!」


二人の服をひっぱって
食べ物屋の方に向かっていく。
ここでも朱音は楽しそうだ。


「クレープ食べたいのクレープ。
 二人とも好きでしょー?」


「うん、大好き。レインは?」


「好きだよ。甘いものとか特に」


「わーい」とスキップする朱音。
店に着くなり早速注文する。


「そういえばレイン、文化祭でライブ
 するんだってね。いいの?歌嫌いなんでしょ?」


「無理やり。私の友達が
 ライブやろっていいだして…」


「でも私レインの声好きだよ」


「私の声が?」


クレープにかぶりつき、
満面の笑みで朱音は恵を見た。


「そっ!レインの声。
 けど…それと同時に悲しい
 気持ちになる感じがして…」


「朱音?」


俯いた朱音を見て結菜が
異変に気づく。
朱音はいつの間にか泣いていた。


「だってレイン、一人で何か
 抱え込んでる気がして」


「―――…その考えは
 間違ってる」


「え?」


恵は朱音の額にでこぴんする。
クスっと笑って歩き出した。


「そんなの心配することじゃない。
 次行くぞ」


「…うん!」
 

「さすがレイン。かっこいいね」





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