†君、男~Memory.. limit of grief~
昔のことを思い出す―――…
8年前に出会い、4年間遊んでいた。
私と10歳も離れ、出会った時でも向こうは16歳。
普通は遊びたい年頃だ。


それでも私と遊んでくれた…
子供だから?


でも私は、そんな彼に
好意を抱いていたのかもしれない。


優兄が引っ越す直前、
私はそう感じてしまっていたから。



「蒼井、ちょっといいか?
 荷物を運ぶの手伝ってもらいたいんだが」


放課後、帰ろうとした恵は優介に止められる。
被服室にあるダンボールを
運んでほしいとのこと。


仕方なくついてき、
山済みされたダンボールを運んでいく。



「高校生活は慣れたか?」


「ん―…まぁ少しね」


「レインってあだ名、
 周りも使ってんだな」


「うん、結構ね。何か愛着あるし。
 それより佐伯先生は
 普段と学校内で態度違うんですね」


ニヤリと笑い優介の方を見る。
「当然」と当たり前のように返事が返ってきた。


「それが優兄のいいとこですかね。
 いちよう弁えはあるってことで」


「相変わらず嫌な言い方だな。
 その性格なおんねーのか?」


「余計なお世話です」


それからも昔の話をしながら
二人は盛り上がっていた。
こんな時間が楽しい…。
そう思うのは人として普通だろう。


結局荷物を運ぶだけでなく、
他にもいろいろ仕事をさせられた恵。
気づけば5時を回っていた。



「もう5時。あっという間ですね」


「悪かったな。
 ここまで手伝ってもらって」


「いえ、別にいいです。
 さようなら」


軽く礼をして帰っていく。
優介はその恵の後ろ姿を見て
昔のことを思い出していた。



会うことは、ないと思っていた。
こんな形で再開するなど、誰が考える。


“悲しい”と思ったのは、
何年ぶりだろうか…。




優兄――…
5年前優兄が引っ越した時、
私は2度と会えないと持っていたんです。


引き裂かれた鎖は、
繋ぐ事が出来ないと



思っていましたから―――…

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