†君、男~Memory.. limit of grief~


生徒会室に入って来たのは
優介。のんきなものだ。と
恵は呆れている。


「そろそろ帰れよ。
 みんなもうかえってんだから」


「分かった」


帰る準備を始める恵。
優介は帰ろうとするが、
恵はそれを止めた。


「今日は優兄の誕生日だろ?」


「―――・・・
 覚えてたのか?」


当たり前だ、と言って
鞄の中から袋を取り出す。
綺麗に包装されていた。



「(レインまだ残ってるのかなぁ?)」


生徒会室に向かって
駆けていたのは燐。
電気がついていたので、
まだ誰か残ってるのだと思ったのだろう。



「レイン?」


ドアを開けようとした時
ふと動きが止まる。


優介の姿もあったからだ。
つい動きが止まってしまった。


「(何か渡してる?)」


恵の持つ袋が気になる燐。


「私が優兄の誕生日を
 忘れるわけがない」


「そうだったな。
 けど俺も覚えてるぞ。
 12月12日だろ」


「・・・忘れてるかと
 思ってた」


唖然とする恵。
そして二人して笑った。


その姿を見て燐は
目を丸くするばかり。




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