†君、男~Memory.. limit of grief~
◇
1曲目のバラードから打って変わり
2曲目はアップテンポだった。
優介は、2曲目に時に姿を
表すこともなく、いつの間にか
姿を消していた。
舞台裏に戻った恵は
優介がいないことにすぐ気づく。
「レイン、どうしたの?」
「あっいや…何でもない。
…悪いがちょっと出る」
「レイン!」
舞台裏の扉から外に出ようとした
恵を止める燐。
燐は何処か怯えたように話し始めた。
「えっとあのー…
佐伯先生と、昔からの
知り合いなわけ…ないよね?」
「何だ?急に」
「いやっその仲いいから」
「変だぞ燐…。
知り合いなわけないだろ。
どこに接点がある」
「そっそうだよね…アハハ」
ごまかして笑う燐。
恵は首をかしげて苦笑いした。
じゃ、と手を振って外に出て行く
恵の後姿を見て燐は深いため息をついた。
「アホらし…。
知り合いなわけないか。
(きっとプレゼントも偶然だな)
ん―…でも何で優兄?」
自分で馬鹿だと思った燐は
それ以上深く考えることはなかった。
しかし、外に出て行った恵は
燐の発言に心臓の鼓動を高鳴らせていた。