†君、男~Memory.. limit of grief~

「下はもりあがってんなー」


二人は部屋に行き、
ベランダから月を眺める。


リビングでは親同士が
仲良く昔の話などをしていた。


「何で水那に来ようと思ったんだ?」


「ん―…制服も可愛かったし、
 雰囲気も良かったしね。
 授業もちゃんとしてたから
 入ってよかったと思ってる」


「お前、昔から頭良かったなー。
 人と違う考えもってたり。
 たとえ5年でも変わるものは分かるな」


「それは見た目が?中身が?」


不機嫌そうに質問する。
優介はクスクスと笑った。


「何がおかしい」とさらに不機嫌になる。
むすっと膨れ、壁にもたれてため息をついた。


「嘘だよ嘘。
 なんも変わってない。
 レインはレインのままだ。
 それで安心した」


「…」


安心…か。
それってどういう感情なの。


この月の様に輝いてる?
それとも何気ない考え?



思ってはいけないことだと、
私は思ってた―――…



こんな考えは駄目だってこと…



「優兄…私は何も
 変わってない。何も…」


「そっか」


軽く笑う優介。
けど、恵にとってはそれは辛かった。


変わってない…
それは確信的なものじゃない。
けど、今は強くしたかった。





雨に打たれても、
悲しいだけでしょ?


それだけ鎖が
錆びてしまうのだから。
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