†君、男~Memory.. limit of grief~


「レーイン!」


「…燐?」


あっという間に放課後になり、
いつものように中庭のベンチで
座って、今日は絵を描いていた恵。
後ろから燐が顔を出してきた。


「こんな寒いのに絵ですか?お嬢さん」


「クリスマスまでには
 完成させようと思って」


「どんな絵描いてんの?」


「この中庭をバックに、
 夜空に降る雪を描こうと」


「すごっ!完成したら見せてね。
 あっ…これ誕生日おめでとう」


そう言ってプレゼントを取り出し差し出す。


「ありがと」


「…最近、いつものレインに
 戻ってきた気がする」


燐はニコッと笑い
中央に向かってジャンプする。
着地した後バランスをとり、
恵みの方に体を向けた。


「レイン、今好きな人いる?」


「は?何だ急に」


「だって最近レイン様子変!
 …っていうのは半分嘘。
 ホントは高校入ってから変だと思ってた」


「      」


燐…。


「私、レインの為だったら
 何だってするよ?それだけ分かって」


強く鋭い目。本気だ。
燐は走り去ってしまった。
残された恵はベンチに深くもたれ、
絵を見つめた。





レイン―――…



レインが悩んでるなら
私は何だってする。


だって、今の私がいるのは
レインがいてくれたから。



だから…迷わないで。

< 94 / 482 >

この作品をシェア

pagetop