†君、男~Memory.. limit of grief~

「あれ、まだレイン来てないの?」


「そーなんですよ」


生徒会室に入ってきた慎。
12月20日。無事に終業式も終わり、
一般生徒は返っていく中、
生徒会はまだ仕事が残っていた。


「多分中庭だと思いますけど」


「中庭?」首を傾げ再び訊く。


「クリスマスまでに完成させたい絵が
 あるみたいで、それ描いてると思います」


燐は成績表をボーっと見つめながら
答えを返す。慎はため息をついて腰を下ろした。


「最近どうしちゃんだろーねレインは。
 ところで他の人等は?」


実は生徒会室にはまだ
慎と燐の二人だけしか来ていなかったのだ。
しんみりとした空気は冷たい。


「有間先輩と森川先輩以外は
 お昼買いに行ってます。
 お二人は用事で変えられましたー」


どんどん沈んでいく燐。
慎はその姿を見て苦笑いし
燐の成績表を取り上げた。


「学年36位かー…」


「1学期より下がっちゃって。
 他にもいろいろ悩みはあるもんですよ」


「何の悩み?」


「それが…」


ガラッ。


ドアの開く音と同時に
二人は何故か固まってしまう。
入ってきたのは恵だった。
< 95 / 482 >

この作品をシェア

pagetop