幸せのカタチ~赤い宝物~


溝口先輩…。

私を見つけて、先輩は微笑んでる。

久しぶりに見る
あのズルイ笑顔で。



「愛果っ?
久しぶりっ。
すっかりギャルだなっ。」


「み…みんなに言われた。
…変かな?」


「お前は可愛いから、何しても良く似合うよ。
ちょー似合う。」



ガラにもなく戸惑いながら私が聞いた質問に、そう言って微笑んでる。


"可愛い"



そう言われて心臓がバクバクしてる。
足がちょっと震えてる。


嬉しい…



嬉しいの私…?



夏休み中会わなくても平気だったのに…

今会ったら何でこんなに嬉しいんだろう?



「大会3位おめでとぅ。
9月も頑張ってねっ。」



だんだん胸の苦しさが増してきて、お祝いだけ言って帰ろうとした。

歩き出した私の背中に、溝口先輩は声をかけた。



「9月の大会こそ、見に来いよ。
ぜってぇゴール守っから…。」



私はそのまま振り向かずに歩く。

夏休み前と同じ光景。


違うのは、前より強く高鳴ってる私のハート。


"ウン"とも"ムリ"とも言えないまま

あの時の


行けば良かった


その気持ちを思い出すと、胸がキュゥっと苦しくなった。




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