幸せのカタチ~赤い宝物~
「お疲れ様です。」
サッカー部の部室に入る。
部室の中は外の春らしい清々しい空気とは違い、汗っぽいようなホコリっぽいような男臭い臭でイッパイ…。
「あ!愛果ちゃんオツカレ~!」
「千夏先輩っ!早いですねぇ。」
ふふっと笑顔を見せながら、ポニーテール頭の小柄な千夏先輩がタオルを畳んでいた。
綾瀬 千夏(アヤセ チナツ)先輩は2年生マネージャー。
いつも笑顔で優しい先輩だ。
まだ慣れない私のミスがバレないように、そっとフォローしてくれる。
「じゃあ私ドリンク作ってきますねっ!」
鞄を置いてボトルのカゴを抱える。
「宜しくねっ。」
千夏先輩の笑顔に送りだされる。
早足で運動部様の給湯室に行って、ボトルに粉末のスポーツドリンクを軽量スプーンで量って水と氷を入れる。
1.5リットルのが全部で10本。
グランドまで持って行くのが超辛い…。
両手でヨタヨタとカゴを持って歩いて行く。
毎回、手のヒラが真っ赤になって悲鳴を上げる。
後もうちょっと。
グランドに降りてあのベンチまで…。
…アレ?
私の持っている重たいハズのカゴが急に軽くなった。