幸せのカタチ~赤い宝物~


「………。」



私を包んだ彰の腕から力が抜けたのが分かった。

お互い無言のまま


後ろ向きでも判る彰の表情…

きっと動揺してる。



私は床の上に落ちた写真に目を落とす。



右下に赤く印字された日付は

去年の10月


文化祭の写真かな。


呼び込みの看板を持ったまだ一年生の彰とウエイトレス姿の杉原が、教室の前に座って満面の笑顔で写ってる。


今よりまだあどけない笑顔


私の知らない彰…



「ゴメン…愛果、コレここにあるの忘れてて…。
処分し忘れてたみたい…。」


写真を食い入る様に見つけていたら、耳元でしょんぼりした声が聞えた。



―ゴメン―
―処分し忘れた―



その彰の言葉でよく分かった。



「付き合ってたの?」



私が出来るだけ平静を保って静かに言った瞬間

彰の腕はピクッと動いた。



「…うん。
去年…半年位?」



だから、杉原は私に文句を付けに来たんだ。

別れても、まだ好きって事だよね…



彰の事…






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