【連作】六天ニ散リユク花―交わりの章―
気配が、揺らぐ。
先ほどまで張りつめていた空気が、蜃気楼のように、風に溶けた。
「……待て……」
吉法師が、声を上げる暇もなく。
気づけば、少年の姿は、いずこかにかき消え――ただ、その存在したことを証すように、抜き身の短刀だけが、馬の背に置き去られていた。
先ほどまで張りつめていた空気が、蜃気楼のように、風に溶けた。
「……待て……」
吉法師が、声を上げる暇もなく。
気づけば、少年の姿は、いずこかにかき消え――ただ、その存在したことを証すように、抜き身の短刀だけが、馬の背に置き去られていた。