恋口の切りかた
「くそ! あいつら──、刀丸しっかりしろよ!」

雪道を走りながら、俺は背中に負ぶった刀丸に声をかけた。

「すぐ、オレんちに着くからな!」

母親の言葉を聞いた直後、刀丸はぱったりと倒れ伏して動かなくなってしまった。

あんな場所に刀丸を放っておくわけにはいかない。

俺は動かない刀丸を背負って、城下町の自分の屋敷に連れて行くことにしたのだ。



「何が鬼の子だ!」

泣きたくなった。

「お前は──刀丸はそんなんじゃねえ!」

鬼の子は俺だ。
刀丸は俺なんかと違って、

優しい、いいやつなのに……──。
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