恋口の切りかた
雪の積もった庭を突(つ)っ切って道場に駆けこもうとした俺は、入り口の所で
中から出てきた青年とぶつかりそうになった。

「虹庵先生!」

「これは漣太郎殿。明けましておめでとうございます」

総髪(そうはつ)を後ろで一つに束ねた青年は、穏やかな口調で言って微笑んだ。

俺は口早におめでとうございます、と返した。


落ち着いた物腰の中にも、精悍(せいかん)で凛乎(りんこ)とした印象がある。
やや険のある目元が、少しだけ親父殿や俺に似ている。


青年は、俺の背中の刀丸に気がついて、
おや? という顔をした。


「虹庵先生、刀丸を助けてくれ!」
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