恋口の切りかた
四人になった屋敷の庭で、俺は元盗賊の男を見つめた。

聞かないほうがいいのかもしれない、と思ったが、どうしても聞かずにはいられなくて、
俺は志津摩の前では口にできなかった質問を唇に乗せた。

「遊水、教えてくれ」

「ん?」

「留玖は……無事だよな? 酷い目に遭わされたりしてねえよな?」

鬼之介と隼人が俺の顔を見て、すぐに目を伏せた。

「俺が知るかい」と遊水は不機嫌そうに言って、俺がぐしゃぐしゃにした二つの書状を眺めた。

「差出人の名はナシ……か」

「名前が無くても、白輝血の奴らしか考えられねえ」

「ふん、『生きたまま返して欲しくば』ときたかい」

遊水は文面から目を離すと、俺を見た。

「なあ、円士郎様。昔、賊だったこの俺から、どんな答えが聞きてえんだい?」

「それは……」

「無事に決まってる、大丈夫に違ェねえと言ってほしいのかい?」

俺は黙った。

遊水はそんな俺を鋭い目で見据えた。

「気休めなんざ言っても無駄だから、正直に言うぜ。
『無事に返す』や『無傷で返す』ではなく『生きたまま返す』と書かれてる。俺の知る限りこういう手合いはな、『命がある状態』しか保証する気がねえ」

「命がある状態しか……?」

俺は背筋が凍るような戦慄を覚えながら聞き返した。

「差出人がねえってことは、散々弄んで返しても、自分たちは知らぬ存ぜぬで通す気なんだろうぜ」

「やめろッ」

隼人が声を荒げた。

鬼之介は青い顔で足元を見ていた。
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