恋口の切りかた
「しかし解せねえな」

遊水は顔をしかめて言った。

「鬼之介の長屋の美人後家さんはともかく、おつるぎ様は鈴乃森座を訪れて拐かされたと言ったな?」

「ああ、あの白蚕糸って奴を調べようとしてな……奴も闇鴉の一味だった……」

俺がほとんど上の空で遊水の問いに答えると、彼は金の眉を寄せて眉間に皺を作った。

「……どうなってやがる?」

「何がだ?」

うつろに遊水を見た俺には何も答えず、遊水は何事か考え込む素振りを見せた後、
今回は俺も操り屋として動かせてもらうぜ、と低く言って、

「まァ、覚悟はしとけ、期待はするな、だが絶望する必要もねえ、信じるしかねえって話だ」

と、そんな言葉を残してふらりと姿を消してしまった。


残った三人の間には重たい沈黙が落ちた。


留玖、留玖、留玖……。

俺は頭の中でその名を繰り返しながら、どうか無事でいてくれとそればかりを思っていた。
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