恋口の切りかた
「よォ、お目覚めだなァ」
低い声が間近から聞こえて、
私が不自由な体でなんとかそちらを向こうとしていると
ゆらり、と光が動いて、蝋燭を片手に誰かが屈み込み、私の顔を覗いた。
見覚えがあった。
年の頃なら、三十前後の男。
真っ黒な着物に、散切り頭。
鋭い二つの目の間にはざっくり裂けた大きな傷があって、顔全体を割って頬から顎の近くまで走り、凶悪な形相を作っている。
白輝血の兵五郎の手下の──暗夜霧夜だ。
「んん──んんんん……」
面白くなさそうに私を見下ろしている男の名前を口にしようとしたら、くぐもった音にしかならなくて、
私は口元を布でふさがれていることに気がついた。
緊張が走る。
私、確か──志津摩と一緒に鈴乃森座に乗り込んで、白蚕糸に話を聞こうとしたら急に眠気に襲われて……そこに、白輝血の連中がやってきて……
記憶が蘇り、自分の状況がようやく理解できた。
私、白輝血に捕まったんだ──。
低い声が間近から聞こえて、
私が不自由な体でなんとかそちらを向こうとしていると
ゆらり、と光が動いて、蝋燭を片手に誰かが屈み込み、私の顔を覗いた。
見覚えがあった。
年の頃なら、三十前後の男。
真っ黒な着物に、散切り頭。
鋭い二つの目の間にはざっくり裂けた大きな傷があって、顔全体を割って頬から顎の近くまで走り、凶悪な形相を作っている。
白輝血の兵五郎の手下の──暗夜霧夜だ。
「んん──んんんん……」
面白くなさそうに私を見下ろしている男の名前を口にしようとしたら、くぐもった音にしかならなくて、
私は口元を布でふさがれていることに気がついた。
緊張が走る。
私、確か──志津摩と一緒に鈴乃森座に乗り込んで、白蚕糸に話を聞こうとしたら急に眠気に襲われて……そこに、白輝血の連中がやってきて……
記憶が蘇り、自分の状況がようやく理解できた。
私、白輝血に捕まったんだ──。