恋口の切りかた
ぽろぽろ泣き始めた私を残虐な笑顔で満足そうに見つめて、

それから突然笑いを消して、
霧夜はズイッと私に顔を近づけてきた。


ビクッと身を固くする私に、


「うかつにこんな世界に首を突っ込むと、どういうことになるかわかったか?」


霧夜は低い声でそう言って、

私は引き起こされ、刀を手にしたままの霧夜に抱きすくめられた。


やだ……!


「んん──っ」

「コラ、暴れンな」


泣き叫んでいたら、急に腕が軽くなって──


「反省の時間は終わりだよお嬢ちゃん」


私を後ろ手に縛っていた縄を刀で切って、霧夜はニヤッと笑った。

続けて足の縄も切られて、私の体は自由を取り戻した。


え……?


何が何だかわからず、その場に座り込んだままぽかーんと霧夜を見つめていたら、


「安心しな。俺は伝九郎の野郎と違って、泣き叫ぶ女を無理矢理手込めにしたり、オマエみたいなガキに手出ししたりするシュミはねェよ」


散切り頭の男はそう言って、目つきを険しくした。


「あーあー、本当にカタギの女を人質に使うとはな。
なァにが任侠だ、やってるコトはそこらの強盗、盗賊と変わらねェ。今日という今日は、俺も我慢の限界だ」
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