恋口の切りかた
「俺は気が短ェんだ。貸しはすぐに返してもらう。

このじゃじゃ馬娘さんよォ。
ここまで首突っ込んでおいて、今さらカタギだからと優しくしてもらえるなんざ思うなよ?

これからオマエには俺の手助けをしてもらうぜェ」


予想外の言葉に、私はキョトンとした。

手助け……?


「って何の……?」


ひゃはは、と霧夜はまた哄笑を上げて、


「そりゃァ、白輝血の兵五郎にオトシマエつけさせる手助けに決まってんだろうがよ」


と、言った。


私はまじまじと、目の前の散切り頭の男を見つめた。


「でもあなたは、兵五郎の手下なんじゃ……」


兵五郎を裏切るということ……だろうか。


「あァ? 虎鶫の貸元から聞いてねェのかよ」

「銀治郎親分さんから……?」

「俺は虎だ。『汚れ仕事を担当する』鵺の手足なんだぜェ?」


霧夜は大きな傷を歪めて口の端を吊り上げた。


「はっ。手足が本体裏切って尾の手先になるなんてことがあると、本気で思ったか?

兵五郎が怪しい動きをしてやがるんで、それを探るために、鵺を『裏切ったフリ』してこれまで潜り込んでたのサ」


驚く私の前で、


「俺は鵺の一部。兵五郎の下についたことなんざ今も昔も一度としてねェよ」


この侠客は堂々と言い切った。
< 1,120 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop