恋口の切りかた
「兄上!」
襖が開く音がして、入ってきたのは冬馬だった。
「どうか私もご一緒させてください!」
そう言う冬馬は、タスキに鉢巻きという姿で、
鬼之介と隼人がぎょっとしたように目を剥いた。
留玖がさらわれたことを母上や冬馬に伏せておくことはさすがに不可能で、母上のほうはと言えば卒倒せんばかりに仰天し、寝込んでしまっていた。
まあ、それでもこんな風に臨戦態勢で同行させろと言ってくるよりはマシだと思う。
「駄目だ」と、俺は冬馬の申し出を即座に突っぱねた。
「何故です! 姉上の御身が危険にさらされているのでしょう!」
冬馬は頬を上気させて食い下がった。
「私とて結城家の子! 今こそ日頃の鍛錬の成果を生かす時! 姉上奪還のため、兄上と共に戦います!」
「うへえ……!? これはまた面倒くさい弟君をお持ちで」
隼人がいつもの如くボソリと余計な一言を吐いた。
もっとも今は、それに構う者もいなかったが。
「俺が不在の間、連中が屋敷のほうに何か手出しして来ねえとも限らねえだろうが。
冬馬、お前まで屋敷を離れてどうする? お前は屋敷を守れ」
冬馬の性格を知る俺は、慣れた応対をして、
「成る程、そういうことでしたら」
あっさりと冬馬は頷いた。
「さすが心得てんな」と隼人は何やら感心して、それから溜息を吐いた。
「他に手はないし、仕方ねえか……」
一抹の不安を残した顔で言う隼人に、鬼之介が、
「秋山殿、ボクは円士郎様よりは冷静だが、悪い案ではないと思うぞ」
と言った。
「俺も、早急に事態を納めるならばやむを得ない手段と考えます」
部屋の隅に控えていた宗助も、能面のような無表情のまま同意を示した。
「万一事が公になれば、結城家の家名に傷がつくのみならず、共に捜査に当たっていた秋山様と秋山家にも何らかの御処分がありましょう」
襖が開く音がして、入ってきたのは冬馬だった。
「どうか私もご一緒させてください!」
そう言う冬馬は、タスキに鉢巻きという姿で、
鬼之介と隼人がぎょっとしたように目を剥いた。
留玖がさらわれたことを母上や冬馬に伏せておくことはさすがに不可能で、母上のほうはと言えば卒倒せんばかりに仰天し、寝込んでしまっていた。
まあ、それでもこんな風に臨戦態勢で同行させろと言ってくるよりはマシだと思う。
「駄目だ」と、俺は冬馬の申し出を即座に突っぱねた。
「何故です! 姉上の御身が危険にさらされているのでしょう!」
冬馬は頬を上気させて食い下がった。
「私とて結城家の子! 今こそ日頃の鍛錬の成果を生かす時! 姉上奪還のため、兄上と共に戦います!」
「うへえ……!? これはまた面倒くさい弟君をお持ちで」
隼人がいつもの如くボソリと余計な一言を吐いた。
もっとも今は、それに構う者もいなかったが。
「俺が不在の間、連中が屋敷のほうに何か手出しして来ねえとも限らねえだろうが。
冬馬、お前まで屋敷を離れてどうする? お前は屋敷を守れ」
冬馬の性格を知る俺は、慣れた応対をして、
「成る程、そういうことでしたら」
あっさりと冬馬は頷いた。
「さすが心得てんな」と隼人は何やら感心して、それから溜息を吐いた。
「他に手はないし、仕方ねえか……」
一抹の不安を残した顔で言う隼人に、鬼之介が、
「秋山殿、ボクは円士郎様よりは冷静だが、悪い案ではないと思うぞ」
と言った。
「俺も、早急に事態を納めるならばやむを得ない手段と考えます」
部屋の隅に控えていた宗助も、能面のような無表情のまま同意を示した。
「万一事が公になれば、結城家の家名に傷がつくのみならず、共に捜査に当たっていた秋山様と秋山家にも何らかの御処分がありましょう」