恋口の切りかた
【剣】
私の刀を背に受けて、白輝血の手下が倒れる。
「ほほー、さすがに噂どおりの腕前だねェ」
外にいた五人のうち、三人を手際よく仕留めた私を見て、暗夜霧夜が散切り頭の下の目をすがめて賞賛した。
油断は出来なかったけれど、毎日の道場稽古と比べると全然相手にもならない連中だった。
「殺ったのかい?」
そう尋ねる霧夜自身も、素早く二人を打ち倒していた。
「人聞きの悪いこと言わないで下さいよ! 急所は外してあります」
この人たちは、私をこんな場所に監禁した犯人だ。
ちゃんと捕まえて、白輝血の奴らだってことを聞き出さないといけない、と思った。
「急所外してるって……今、刃のほうで斬ってたんじゃねェかい?
峰打ちには見えなかったぜェ?」
「……刃で斬っても、死なない程度の傷ですよ。これだけ力の差があれば、そのくらいの加減はできます。痛みで当分動けないと思うけど……」
「へェ? そいつは大したモンだね」
霧夜はそう言って、私に斬られた者たちを見下ろした。
私は眉間に皺を寄せ、霧夜にやられた二人の男を見た。
私が斬った三人は暗闇で苦痛のうめき声を上げているが、霧夜にやられた者は声一つ上げずに倒れ伏している。
暗くて傷の状態までは見えないけれど……
「そっちこそ……」
「ああ、俺? 当然二人とも殺した」
えっ……。
あまりにあっさりと、何でもないことのように言った霧夜に、私は驚いた。
この人、武器に匕首を持ってはいるようだったけれど、今は使っているようには見えなかったのに──。
霧夜はニヤッと口元を歪めた。
「素手でも、これだけ力の差があれば、死ぬように加減することもできるんだぜェ?」
私は鼻白みながら、この渡世人を睨んだ。
「……知ってますよ。そういうことができる人は、他にも知り合いにいますから」
もっとも遊水とは違って、彼の場合は何かの武術のような動きではなく、単純に喧嘩慣れしただけの動きに見えた。