恋口の切りかた
しょんぼりしている私を見て、疲れたと勘違いしたのか、霧夜は少し休むかと言って道の脇の倒木の上に腰掛けた。

私は急いで大丈夫ですと言って、休む時間があったら、お玉という人を助けに行きたいと再び訴えた。

「いいから座れ! 慣れない着物と山道で、実際に息が上がってただろうが」

霧夜に強い口調でそう言われて、私は渋々霧夜の横に腰掛けた。


うう、誰がこんな着物着せたせいだと思ってるんだよう……。

私は横に座る霧夜に恨めしい視線を送った。


そうしたら、
そんな私を霧夜は優しい表情になって目を細めて眺めて──私はまたどぎまぎした。

「な、なんですか?」

「いや」

霧夜は目を閉じて軽く笑った。

「いいコだな、オマエは」

「えっ……」

「結城の円士郎様がかわいがってる気持ちがわかると思ってねェ」

「ええっ……と……」

かああ、と顔が熱くなるのを感じていると、霧夜は何かを考え込むように目つきを鋭くした。


「あのお玉とかいう女。あれはたぶん──オマエが心配する必要はない」

「どうしてですか?」

「伝九郎に抱かれるのを泣き叫んで抵抗していたが……」


霧夜は、私の背筋が凍るようなことを口にして、


「ありゃァ、演技だな」


そんなことを言った。
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