恋口の切りかた
ふと鳥英のことを思い出して、円士郎もやっぱり大人の女の人が好きなのかな、と思った。

私なんか……いつもいつも男の格好ばかりしていたせいで、立ち居振る舞いまですっかり男と同じになってしまっていて……

円士郎にもあきれられていたのかもしれない。

母上から教えられた女物の着物の着方も、今では記憶の底に沈んで、一人でこんな風にちゃんと着ることができるかも怪しかった。

そこまで考えて、ん? と私は首を捻った。

眠っている間に霧夜に着替えさせられた着物は、これだけ動き回ったのに全く着崩れもしていなくて、完璧な着付けのように思えた。

「霧夜さんは……女物の着物の着付けとか、よく知っていますね」

「あァ、慣れてるからな」

「慣れてるって……女の人に着物を着せることに?」


言ってしまってから、それがどういうことなのかに思い当たって、私はまたまた真っ赤になってしまった。

横で霧夜が吹き出した。


「ひははは! イッチイチ面白ェ反応するなァオマエ。
まァ、そういう意味『も』あるけどなァ」


他にどういう意味があるのだろう。

霧夜はよくわからないことを言って、私をジロジロと眺め回して、


「心配すんな、心配すんな。別にオマエを着替えさせた時だって、素っ裸にしたワケじゃなし。
下着の上からだし、ガキ相手に何もしてねーよ」

私は頭から湯気がでそうなくらい顔が熱くなるのを感じて、身を庇うように自分の両肩を抱き締めた。

思いきり「ガキ」と言われて、何だかカチンとした。
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