恋口の切りかた
「なっ……なんでワザワザそんなことするんですか! こんな山道歩くことになるってわかってたクセに……!」

嫌がらせとしか思えない。

「ん~? それは普段、オマエの男の姿しか見たことがなかったからな。
ちょっと女の格好をさせてみたくなったのさ」


普段?

その言い方に少し引っかかるものを感じつつも、城下をうろちょろしている私を何度か見かけているという意味だろうかと私は解釈した。


「安心しな、ガキには興味ねェって言ったろ」

霧夜は笑って、
不意に、どこか艶っぽい目つきでこちらを流し見た。

「しかし、そういう仕草見てるとそそられるモンがあるねェ」

霧夜はそう言って、
自分で自分の肩を抱いている私に視線を注いできて、

男の人からそんな風に見つめられることに慣れていない私は、茹でダコみたいになってしまった。


私の表情を見てまた霧夜がゲラゲラと笑った。


「が……ガキじゃないもんっ!!」


思わず怒鳴ったら、霧夜が、ん? という顔をした。

私は肩を抱いていた手を膝の上に下ろして、ぎゅっと握った。


「み……みんなして私のことをガキガキって……男の人は、そんなに大人の女の人がいいんですか!?」


円士郎のことを思い出して
なんだか悲しくなって、

後半は涙声になってしまった。
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