恋口の切りかた
「そりゃァ、色気のある女がいいに決まってらァな」

霧夜は情け容赦なくバッサリ斬ってくれて、私は泣きそうになった。

落ち込む私を眺めて、霧夜は意地の悪い笑い声を上げて、


「どうしたァ? 惚れた男にでも子供扱いされたのかァ?」

「そ……そんなんじゃ……」


私は手元に視線を落とした。

ふーん、と言って、霧夜がこちらをじっと見つめている気配がして、何だか落ち着かない気分でいたら、

「オマエは、身分が高いのに俺を怖がったり毛嫌いしたりしねーな」

霧夜は突然そんなことを口にした。

「それどころか見下す様子もねェ。この散切り頭や傷を見たら、普通の奴でもまずこんな風に話なんかしようとは思わねェもんだがな」

「へ……っ?」

これまで全く意識していなかったことに、私はちょっと驚いて霧夜のほうを振り向いた。

霧夜は優しい顔をしていた。


「前言撤回」


霧夜がそう言って立ち上がった。


「オマエみたいな純粋そうな娘もいいかもな」


そんな声が降ってきて、霧夜が提灯を手にしながらニヤッとした。


「自分でいい女に育てるってのも悪くねェ」
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