恋口の切りかた
「さてと、そろそろ行くぜ」


霧夜に言われて、私も立ち上がって、

ん? と私の顔を提灯で照らして霧夜が眉を寄せた。


「オマエ、唇……」


言われて指で唇に触れたら、どす黒い色がべったり付いてきた。

「あ……薬の眠気に抵抗して、自分で噛み切ったから……」

私は昼間の出来事を思い浮かべてちょっと苦笑した。

結局無意味だったし、あんなに思いきり噛み破ることはなかったなあ、と思った。

「自分で?」

霧夜は少し目を大きくした。

その手が私の顎をつかんで、突然彼が顔を寄せてきて



霧夜の舌がぺろっと私の下唇の血を舐め取った。
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