恋口の切りかた

 【円】

深夜の通りはしんと静まり返っている。


「どうかしたか?」

白輝血の兵五郎の店の前まで来て足を止めた俺に、隼人が不審そうな目を向けた。

鬼之介たちは少し離れた場所で店の様子を見張っている。


「いや、何か嫌な予感がしてよ……」

「ここまで来てなに気弱なこと言ってんだよ、行くぞ」

「……おう」


よくわからないが、早く留玖を取り戻さなければマズい。
非常にマズい気がする。

何かが俺にそう告げていた。


正体不明の焦燥感に急き立てられて、

こんな時間だというのに灯りの漏れている貸元の店に、俺は隼人と共に踏み込んだ。


「邪魔するぜ! 兵五郎親分はいるか!?」


大声で怒鳴って──


「何だァてめえら!?」

予想通りの光景が展開されて、ぞろぞろと出てきた白輝血の子分がたちまち俺と隼人を取り囲んだ。
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