恋口の切りかた
留玖と与一の間に、本当に何があったんだ──!?


俺に巨大な疑問を残したまま、こうしてこの事件は終わりを迎え、

俺と留玖を狙った天照が失敗作だったとしても、場に駆けつけ、危機を救おうとした志津摩に対しては、

さらわれた留玖が無傷で帰ってきたこともあり、お咎めなしにするようにと俺は神崎に命じて──

結城家の息女が当主不在の折に渡世人にさらわれたという、この不名誉極まりない話は、
操り屋のおかげでパタリと人の口に戸が立てられ、奉行所内でも神崎までで情報は止まり、町奉行の耳にも伝わらなかった。

そして俺たちが兵五郎や狐面の相手をしていたのと同時刻、城下の一郭では火の手が上がり──


燃え上がったその炎は、武家屋敷の界隈の外れにある竹林を全焼させた。


まるで回文のような出来事だが、
五年前に伊羽家の息子が怪死体で見つかって、謎の化け物の仕業だと言われて以来、昼間でも近づく者がいなかった──あの竹林である。


焼け跡からは焼け落ちた小屋が出てきて、こんな場所に住み着いていた者があったのかと駆けつけた者たちを驚かせ、

更に小屋の中からは怪しげな歯車やら何やらの仕掛けも見つかった。


そここそ、人形斎の名を騙った狐面の男が住処にしていた場所であり、

昨日の昼間に番所を訪れた際、俺がそうと睨んで神崎に伝えようとした場所だった。


城下や町の付近で、カラクリを作りながら人知れず隠れ住むのに適した場所。

城下七不思議の一つとして噂に上り、恐れられて近づく者のいない竹林はまさに、あの名も知らぬ男の身を隠すのに打ってつけだったわけだ。
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