恋口の切りかた
十一、天袋の霊魂さん
【剣】
屋敷に戻ったら、
女物の着物に身を包んだ私を見て、母上は目を丸くして、それから涙を流して無事を喜んでくれて、
冬馬もまた、顔を上気させて駆け出てきて、私の無事に安堵の色を浮かべた。
家族の温かさと己の不甲斐なさで涙がこぼれた。
私が結城家にもたらした不名誉は、遊水が隠蔽してくれたようだけれど──
自分のせいで、志津摩まで罰を受けるところだったと聞いて、先走った行動のせいで、恩ある結城家のみならず周囲に多大な迷惑をかけたことが悲しくて、悔しくて、
私はその夜、布団に入ってもなかなか眠ることが出来なかった。
そうしたら次の日、円士郎から改まった感じで部屋に呼ばれて──
円士郎の部屋に入ったら、彼は恐い顔で畳を睨んでいた。
私は、きっと円士郎も怒っているんだと思って、早く謝らなくてはと思ったのだけれど、言葉がうまく出てこなくて、
嫌な沈黙の末に、
「ごめんな、留玖」
そう言ったのは円士郎だった。
「お前に酷いこと言って、追いつめて、あんな行動とらせて、危険な目に遭わせて──最低だな、俺」
私は自尊心の高い円士郎の口から出てきた信じられない言葉に、驚いた。
「……すまん」
そんな謝罪を唇に乗せる円士郎は、普段の彼からは想像できないくらい打ちひしがれた様子だった。