恋口の切りかた
「あ……わ、私こそ、ごめんなさい」

私はびっくりしながら謝った。

「勝手な行動をとって、結城家の家名に泥を塗って……」

言っているうちに
情けなくて、
情けなくて、
またじんわりと涙がこみ上げて視界が滲んだ。

「馬鹿野郎、家名なんてどうでもいいんだよ……!」

涙が落ちないように我慢していたら、円士郎がそんなことを言って私の手を握って

心臓が跳ね上がった。


「お前のほうが何百倍も大切に決まってんだろうが!」


二人っきりの部屋の中で、円士郎に真っ直ぐ目を見つめられて、そう言われて──

いけないことだとわかっていても、
どうしようもなくどきどきして、

「留玖……」

円士郎が優しい声で私の名を呼んで、ぎゅっと私の手を包む大きな手に力がこもった。

「な、なに?」

騒ぐ胸をどうにか落ち着けようとしながら、かろうじて聞き返したら、


「お前が酷い目に遭わされるかもしれないと知って、気が変になりそうだった。

お前が俺の身代わりに殺されそうになるのを見て、心臓が止まるかと思った……!」


円士郎は泣きそうな顔でそう言って、


彼はそんなにも私のことを心配してくれたんだ、とわかって

嬉しくて
胸の中が温かくなって、

やっぱりこの人が好きだ、と思う。


エンが好き。

大好きだよ……。
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