恋口の切りかた
「早く結城晴蔵の苦しむ姿が拝みたい……!」

本尊の脇の闇の中に沈んでいた片腕の男が、腕のない右肩を押さえて声を出した。

「あの男に切り落とされた腕の付け根が疼く──」


「まあ、俺は緋鮒の仙太に復讐できればそれでいい」

と、離れた場所に座っていた男が言った。


「あの町で、緋鮒の仙太らしき男がその──結城円士郎とか言う奴と一緒にいたってのは本当なんだろうな」


そう念を押す男の腕には、罪人に入れられる入れ墨があった。


「ああ。噂ではあるがな」

「ふふふ……あのくそガキにまんまとハメられたせいで、こっちは役人にとっ捕まって島に送られたんだ。たっぷり礼をしてやる」

「息巻くのはいいが、貴様は表だって動くな。その腕は目立つ」


「お頭」と呼ばれていた男が忠告をして、


「時は来た。復讐を始めようか」


一同を見回した。



「この闇鴉の一味に喧嘩を売った者がどうなるか、思い知らせてやる……」



ばさばさと、近くの木々の間で羽音を立てて鳥が騒いだ。

雲が切れて、得体の知れない者どもが潜む古寺を、星明かりが不気味に浮かび上がらせた。
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