恋口の切りかた
まったく虹庵の言うとおりだった。

やっぱり、縄で縛られた状態で逃れられなかったから縄抜けを教わりたいなどと考えてしまったのは、短絡的に過ぎたのだろうか。

私がうつむいたままでいると、「ふむ」と虹庵は考えこむような声を発して、

「とは言え、相手に直接攻撃を加えるばかりが武芸ではない。
縄抜けというのは完全に後手の護身術だが──後の先を取ることを考えるのは悪くはないよ」

驚いて顔を上げると、虹庵は優しい顔でこちらを見つめていた。

「留玖は今年で十七になったのだったね」

「はい」

「縄抜けというのは──体が未熟な子供のうちに教えるのは危険なんだ。
元服を迎えたとは言え、本当はもう少し体が大人になってからのほうがよいのだが……」

虹庵は苦笑を浮かべた。

「やれやれ。やはり留玖も、円士郎の役目を手伝いたいから、ということかな?」

「え……?」

「先月、円士郎も──今度就く役目で必要になるから、急いで捕縄術を教えてほしいと言ってきたばかりだよ」

私はびっくりした。
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