恋口の切りかた
先月の焼死事件の解決に番方として一役買ったことが評価されて、今月から新たにこの国に置かれた「盗賊改め」の長官のお役目に円士郎が就いたことは知っていたけれど……
まさか円士郎まで、虹庵に捕縄術の教えを願い出ていたとは思わなかった。
「とは言え──相手を捕縛する術よりも、そこから逃れるための縄抜けを修めたがるというのは……どうもそればかりが理由ではないようだね」
「それは──」
言い淀んだ私に虹庵は「まあ、いいでしょう」と微笑して、それから真面目な顔をした。
「だが、縄抜けを修めるためには、捕縛の仕方も修めなければならない。事を急いては何事も修得できないよ」
「……はい!」
私は慌てて頷いた。
虹庵はまた表情を緩めて、
「うむ。私が直接指導したいところだが、これから今日も診なくてはならない患者がいてね。しばらくはちょっとね。
円士郎には一通り捕縄術については教えてあるから、彼から教わるのもいいが……」
「えっ」
私は焦った。
「あの……あの、縄抜けの修行をするということは、やっぱりその、縄で縛ってもらって……そこから抜ける練習を……するんですよね?」
「まあ、そうだな」
私は円士郎に縛ってもらうところを想像して、赤くなった。
なんだかそれはちょっと嫌かも、と思った。
何が嫌なのか自分でもよくわからないんだけど……でも……
うーん、なんだか不健全な図のような気がするよ……。
いや、もちろん真面目な武術の鍛錬のはずだけど……なんか……
まさか円士郎まで、虹庵に捕縄術の教えを願い出ていたとは思わなかった。
「とは言え──相手を捕縛する術よりも、そこから逃れるための縄抜けを修めたがるというのは……どうもそればかりが理由ではないようだね」
「それは──」
言い淀んだ私に虹庵は「まあ、いいでしょう」と微笑して、それから真面目な顔をした。
「だが、縄抜けを修めるためには、捕縛の仕方も修めなければならない。事を急いては何事も修得できないよ」
「……はい!」
私は慌てて頷いた。
虹庵はまた表情を緩めて、
「うむ。私が直接指導したいところだが、これから今日も診なくてはならない患者がいてね。しばらくはちょっとね。
円士郎には一通り捕縄術については教えてあるから、彼から教わるのもいいが……」
「えっ」
私は焦った。
「あの……あの、縄抜けの修行をするということは、やっぱりその、縄で縛ってもらって……そこから抜ける練習を……するんですよね?」
「まあ、そうだな」
私は円士郎に縛ってもらうところを想像して、赤くなった。
なんだかそれはちょっと嫌かも、と思った。
何が嫌なのか自分でもよくわからないんだけど……でも……
うーん、なんだか不健全な図のような気がするよ……。
いや、もちろん真面目な武術の鍛錬のはずだけど……なんか……