恋口の切りかた
「でも、この着物は──」

ぎゅっと、両手で着物を握りしめる。

刀丸は今も、薄く返り血の色が残るボロボロの着物を着ていた。
自分を捨てた母親が縫ってくれたという、着物だ。

「刀丸」
と、言って、親父殿は真剣な顔で彼を見た。


「おまえには才がある。

その年で剣の腕も素晴らしいが、何よりおまえはすでに『六人もの盗賊を斬ったことに捕らわれて』いない。
すでに過去にしている。

これは大したものだ」


さっきの真剣は、それを見るためだったのか──?


「親が恋しいか?」

刀丸は唇をかんだ。

「うむ、まあ無理もない。
忘れる必要もない。

だが、捕らわれるな。
例えばその着物も──ただの着物だ」


刀丸はわかったのかどうなのか、親父殿の言葉にただ黙ってうなずいた。
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