恋口の切りかた
「私に関して、聞きたいことはたくさんあるでしょうが……どうぞそれは、円士郎様からお聞きになって下さい」
青文が足を止めていた。
目の前にはいつの間にか、結城家の長屋門があった。
「先刻、おつるぎ様には──私の顔は、見えていたのですね」
門を見上げたまま、
ぽつりと、元盗賊だという青年はそんなことを口にした。
「それが、嬉しかった……」
「遊水……さん?」
見慣れた長屋門を目にした安堵で、急速に意識が遠退いていく。
「青文ですよ。……できることならば、貴女の中では最後まで、遊水のままでいきたかったですが──」
視界がかすみ、やはり悲しそうな言葉だけが届いて、
「貴女たちと遊水として過ごしたこの一年は、私の一生の中で一番楽しい時間でした」
「貴女のような人間と出会えたこと、嬉しく思います」
「さようなら、優しい娘よ」
「どうか円士郎様とお幸せに」
私の意識が最後に捉えたのは、永遠の別れのようなその響きだった。
青文が足を止めていた。
目の前にはいつの間にか、結城家の長屋門があった。
「先刻、おつるぎ様には──私の顔は、見えていたのですね」
門を見上げたまま、
ぽつりと、元盗賊だという青年はそんなことを口にした。
「それが、嬉しかった……」
「遊水……さん?」
見慣れた長屋門を目にした安堵で、急速に意識が遠退いていく。
「青文ですよ。……できることならば、貴女の中では最後まで、遊水のままでいきたかったですが──」
視界がかすみ、やはり悲しそうな言葉だけが届いて、
「貴女たちと遊水として過ごしたこの一年は、私の一生の中で一番楽しい時間でした」
「貴女のような人間と出会えたこと、嬉しく思います」
「さようなら、優しい娘よ」
「どうか円士郎様とお幸せに」
私の意識が最後に捉えたのは、永遠の別れのようなその響きだった。