恋口の切りかた
二、円士郎暗殺
【剣】
明るい日差しで目が覚めると、見慣れた自室の天井が視界に入った。
飛び起きるようにして上半身を起こすと、激しい痛みが頭に広がる。
「留玖!」
堪らず額を押さえた私の真横から、温かい声がした。
「大丈夫か──?」
円士郎が、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
「エン……」
ずっとそばにいて、手ずから看病してくれたのか、
枕元に座った円士郎の近くには水を張ったタライと、それに浸した手拭いが見えた。
「心配したぞ。お前、昨日の晩からずっと目を覚まさなくて……随分うなされてた」
そんな円士郎の優しい声を聞いて、
夢うつつのような出来事が蘇って、視界が滲んだ。
「留玖……?」
円士郎がびっくりしたように、しずくの流れ落ちてゆく私の頬に手を触れた。
「どうした!?」
「エン……」
私は彼の名前以外に言葉が見つからなくて、ただ泣き続けて、
「どうしたんだよ、留玖」
ぼう然と私の顔を見つめていた円士郎が、私を引き寄せて抱き締めた。
「エン……」
その腕にすっぽりと包まれて、
「エン……遊水さんが、遊水さんが──」
私は円士郎の胸にすがりついて、ようやく言葉にできた。
「遊水さんが、青文様だった……! 亜鳥さんの仇だった……!」