恋口の切りかた
俺は悲鳴に近い声でさけんだ。


「おまえ、女なら──なんで『トウマル』なんて男みたいな名前なんだよ!?」


この俺の魂のさけびに対して、

刀丸が返してきた答えは──


「お父がね、トメとかタエって名前はもうねえちゃんたちに使っちまったから、おまえはトウマルだ、って」


──俺にはよくわからないものだった。


「そうか。トウマルと言う名は、『トマル』か」

こちらもようやく思考停止から復活したのか、親父殿がそんなことを言った。


「……トマル?」

「止まる。『止め』『絶え』と同じで、もう子供を授からないように、という意味だろう」


俺はまた別の種類の衝撃を受けて絶句した。



以前、刀丸がしていた話を思い出す。

貧しい農民の家では子供を育てきれなくて売る──



刀丸の前にすでにトメやタエという名前の姉がいる。

つまり俺が何も考えずに呼んでいた刀丸の名は……
< 144 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop