恋口の切りかた
言いながら、

風佳と青文の様子を眺めて、背筋が冷たくなるのを感じた。


「毒──!?」

亜鳥と与一が、ぎょっとしたように俺を見て、

「お……おいおい、冗談だろ──」

俺は笑おうとしたが、頬が引きつった。

「毒を入れなすったのは、円士郎様が飲んだ茶の中ですか?」

青文が風佳の腕を押さえたまま、彼女がちらちらと視線を送っていた湯飲みを見て言った。

風佳は目に涙を浮かべて震えているだけで、何も言わない。

「はあ? 風佳がそんな真似するわけねーだろ」

俺は風佳を見つめて──




風佳が目を逸らした。




え……?



「何してる!? 飲んだものを吐け!」

青文が俺に怒鳴った。

「吐かねーよ!」

俺も怒鳴り返した。

「俺は風佳を信じる! この娘はそんな真似するような奴じゃねえ!」

「────!」

青文が絶句して、ぎりっと奥歯を鳴らした。

「──っ虹庵殿がいつか危惧したとおりだな。
円士郎様、あんたは心を許した者に足下をすくわれる……!」
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