恋口の切りかた
青文は風佳から手を離して、俺のほうに歩み寄りながら

「与一」

と、短く言った。

女形姿の侠客が、何かを読みとった様子で

突然横から俺の肩を押さえた。


──!?


俺の注意が一瞬逸れて──


ハッと意識を目の前に戻した瞬間、

強烈な掌底を腹に食らった。


息が止まり、

胃の中身が逆流して、堪らず俺はその場で嘔吐した。

一度では治まらず、二度、三度と、痙攣する胃の中身を吐き出して──



──クソ、今の掌底は……青文か……



饐えた味のする唾を吐き捨ててむせ返り──

俺は目の前に立ってこちらを見下ろしている金髪の男を、涙に滲んだ視界で睨み上げた。


「そんなに時間は経っていないはずだ。とりあえず、これで大丈夫だな」

青文は息を吐いて、風佳を振り返った。

「風佳様、どこでこいつを手に入れなすった?」

手にした赤い包みを突きつけて、青文は詰問した。

「中身は何ですか?」

「……知りません……わたくしは、何も……」

風佳が消え入りそうな震える声で呟いた。
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