恋口の切りかた
三、回復不能
【円】
夢うつつの朦朧とした意識の中で、
波のように襲ってくる激しい痙攣と息苦しさを何度か感じて──
すすり泣くような声で、俺は目を開けた。
「留……玖……?」
俺のそばに座って、大切な幼なじみの少女が泣いている。
少女は何かを胸に抱き締めていて、悲しそうな大きな目からはぽろぽろと涙がこぼれ落ちて、後から後から白い頬を濡らしていく。
また、つらいことがあったのか……?
こいつにいつも笑っていてほしくて、
二度とこんな顔なんてさせたくなくて、
いつもそばで守ってやりたいと思ったのに──
泣くなよ……留玖……
そんな悲しそうな顔で泣かないでくれ……
夢か現実かはっきりしないまま、
身を起こして、泣いている少女に手を伸ばそうとして──
ぐるりと視界が回った。
「エン……!?」
泣いていた少女が弾かれたように俺を抱き留めて、
柔らかい腕の中に包まれながら、やっぱり夢かと思う。