恋口の切りかた
「動いちゃ駄目! 寝てないと駄目だよ……!」


何だ……?

なんで俺、こんなことになってるんだ?


くそ、体に力が入らねえ……


夢の中なのか現実なのか、

俺は布団に寝かされているようで、
留玖は俺を静かに横たえてから、袖で涙を拭いて笑顔を見せた。

無理矢理に笑っているような、悲痛な色の滲んだ微笑みだった。


……違う。

俺はお前のこんな笑顔が見たいんじゃない。


「待ってて、エン。今、母上や冬馬を呼んで来るからね」

留玖は涙の跡が残るほっぺたで俺に微笑みかけて、立ち上がろうとして、

「……行くな……!」

俺は慌ててその袖を捕まえた。

「で……でも、エン、みんな心配してる……」

留玖は、立ち去ろうとした方向と俺とをおろおろと見比べて、

俺はたまらなく愛おしくなる。

「……ここにいろよ。お前と二人でいたい……」

彼女を見上げたまま、俺がそう告げると、
立ち上がりかけていた留玖の目から見る見る涙が溢れた。

「いる……! 私、ずっとここにいるよ……」

再び座り込んで、留玖は泣きながらそう言った。
< 1,528 / 2,446 >

この作品をシェア

pagetop